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2025.07.04 【症例紹介】8歳7カ月イタリアングレーハウンドの歯石除去|口臭と赤みの裏にあった口腔トラブル

お口のニオイや赤みなど「少し気になるけど様子を見ようかな」と感じるサインには、注意が必要なこともあります。そのままにしておくと、見えない部分で炎症が進行してしまうことがあるためです。

今回は、口臭と頬粘膜の赤みによるご相談から処置に至ったイタリアングレーハウンドの症例をご紹介します。


■目次
1.症例情報(概要)
2.ご相談内容とご来院時の状態
3.検査結果と治療方針
4.処置の流れ
5.術後の様子と経過
6.頬の赤みや口臭に注意|歯石が原因で起こる頬粘膜潰瘍とは?
7.まとめ

症例情報(概要)

種類:犬(イタリアングレーハウンド)
年齢:8歳7カ月
性別:去勢オス
体重:8.6kg
主訴:口臭
病名:中等度歯石の付着、歯肉炎、頬粘膜潰瘍
処置内容:全身麻酔下でのスケーリング、歯科用抗菌剤の塗布、インターベリー処置
術後経過:歯肉と頬の赤みの改善・口臭の消失/経過良好

ご相談内容とご来院時の状態

「口が臭う気がする」とのご相談でご来院いただきました。
診察では、歯の表面に目立った歯石の付着が見られ、特に奥歯には厚くこびりついている部分がありました。頬の内側にも赤みがあり、口内に違和感や不快感がありそうでした。

検査結果と治療方針

検査の結果、すべての歯に中等度の歯石が付着しており、奥歯周辺では歯ぐきに軽度から中等度の炎症が確認されました。さらに、奥歯に付着した歯石が物理的に頬の内側を刺激し続けていたことが原因と考えられる潰瘍も認められました。

今回の処置では、歯石を取り除くことで頬への刺激を減らし、歯ぐきの炎症には外用薬(インターベリーα)の併用によって改善を目指すこととなりました。

治療方針

・超音波スケーラーによる歯石除去
・歯の表面の研磨(ポリッシング)
・歯周ポケットへの抗菌剤軟膏の塗布
・歯肉炎の軽減を目的としたインターベリーα製剤の外用処置

処置の流れ

全身麻酔による処置となるため、まずは術前に血液検査を行い、体調に問題がないことを確認しました。

そのうえで、以下の流れで処置を実施しました。

①歯石除去(スケーリング)
超音波スケーラーを使用し、歯の表面にこびりついた中等度の歯石を丁寧に取り除きます。

②歯の研磨(ポリッシング)
スケーリング後は歯の表面がザラザラするため、2種類の研磨剤を用いて表面をなめらかに整え、再び汚れがつくのを防止します。

③歯周ポケットの処置
全体に軽度〜中等度の歯肉炎が見られたため、すべての歯周ポケットに歯科用の抗菌剤軟膏を塗布し、炎症の抑制を図りました。

ご自宅でのインターベリーαの外用処置

歯肉炎による赤みが強かったことから、処置後のケアとして、インターフェロンα製剤(インターベリーα)をご自宅で塗布していただく方針としました。
このインターベリーαは、歯肉の炎症をやわらげる効果が期待でき、継続的なケアに役立つ治療法のひとつです。飼い主様には塗布方法や注意点をご説明し、ご家庭でのケアをお願いしました。

術後の様子と経過

処置後の状態は安定しており、ご自宅でのインターベリーαの使用とホームケアを継続していただいた結果、歯肉や頬の粘膜に見られた赤みはすっかり引き、気にされていた口臭も改善されました。

現在も良好な状態を保っており、引き続きご家庭でのオーラルケアに取り組んでいただいています。

頬の赤みや口臭に注意|歯石が原因で起こる頬粘膜潰瘍とは?

歯石が厚く付着した奥歯が、ほおの内側(頬粘膜)に長時間あたることで、粘膜が擦れて小さな傷ができることがあります。これを「頬粘膜潰瘍」といいます。

この潰瘍が進行すると、次のようなトラブルにつながることがあります。

食べものや水がしみる・違和感がある
口の中に痛みや違和感が出ることで、食欲が落ちることがあります。

細菌感染を起こしやすくなる
潰瘍部分は細菌が繁殖しやすく、赤みや腫れ、膿をともなう炎症に発展することがあります。

炎症が口の奥へ広がることも
頬だけでなく、歯ぐきやのどの奥にまで炎症が波及し、口臭の悪化発熱を引き起こすケースもあります。

さらに、炎症が慢性化すると、治りにくくなったり、何度も再発したりする場合もあります。ただし、頬粘膜潰瘍は、奥歯の歯石を取り除いて刺激をなくすことで改善することも多く、早めの対処が非常に重要です。

「ほおの内側が赤い」「口臭が強い」と感じたら、頬の粘膜に潰瘍ができているサインかもしれません。早めの相談が愛犬の負担を抑える近道です。

まとめ

今回は、奥歯の歯石が頬粘膜に触れて潰瘍を起こしていた症例をご紹介しました。口臭や赤みといった小さなサインも、実はこうしたトラブルの始まりであることがあります。

犬の口の中は見えづらく、痛みを我慢してしまう子も少なくないため、異変に気づくのが遅れがちです。「ニオイが気になる」「なんとなく違和感がある」そんな小さな気づきが、大きなトラブルの予防につながります。気になったときにご相談いただくのはもちろん、定期健診を活用して早期に変化に気づくことも大切です。

かず動物病院では、お口のニオイやわずかな赤みなど、日常のちょっとした変化にも丁寧に対応しています。気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。

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