2025.06.12 【症例紹介】7歳11カ月ミックス猫の歯石除去・抜歯処置|口臭が気になったら早めの受診を
愛猫の口臭がいつもより気になる…そんな小さな変化の裏には、歯周病などお口のトラブルが隠れていることがあります。
猫は痛みを我慢しやすく、見た目では異常に気づきにくいこともあるため、違和感に早めに気づいてあげることが大切です。
今回は「口臭がきつくなった」とご相談いただいた猫の症例をご紹介します。
■目次
1.症例情報(概要)
2.ご相談内容とご来院時の状態
3.検査結果と治療方針
4.処置の流れ
5.術後の様子と経過
6.見過ごしやすい猫の歯周病|放置によるリスクとは?
7.まとめ|早期発見と継続的なケアで健康なお口を守りましょう
症例情報(概要)
・種類:猫(ミックス)
・年齢:7歳11カ月
・性別:去勢オス
・体重:6.0kg
・主訴:口臭
・病名:中等度~重度歯周炎
・処置内容:全身麻酔下でのスケーリング・抜歯・歯肉粘膜フラップ術
・術後経過:麻酔覚醒良好/口臭の改善・食欲回復/経過良好
ご相談内容とご来院時の状態
飼い主様からは「最近、口臭がきつくなった」とのことでご相談をいただきました。
一見すると大きな異常はなく、猫自身も口を気にするそぶりはなかったそうですが、診察の結果、奥歯にぐらつきがあり、歯ぐきにも炎症が見られました。
検査結果と治療方針
検査の結果、歯石の付着は軽度でしたが、両上顎の奥歯に加え、右下顎の奥歯でも歯周病が進行しており、歯根の状態も悪化していました。
これらの歯を残しておくと、将来的に痛みや炎症、さらに深部の感染を引き起こすリスクがあるため、以下の処置を実施することになりました。
<治療方針>
・超音波スケーラーによる歯石除去
・ぐらつきのある歯の抜歯
・抜歯部の歯肉粘膜フラップ術
・歯周ポケットへの抗菌剤塗布
処置の流れ
安全な麻酔処置のため、まずは術前の血液検査を実施し、全身状態に問題がないことを確認しました。
続いて、以下の順で処置を行いました。
①歯石除去(スケーリング)
超音波スケーラーを使って、歯の表面の歯石を丁寧に除去します。
②研磨(ポリッシング)
歯石除去後の表面はざらつきやすいため、研磨剤でなめらかに整え、再付着を防ぎます。
③抜歯と骨の処置
歯根が機能していない歯(両上顎奥歯4本・右下顎奥歯2本)を抜歯します。
歯肉を歯から丁寧に剥離し、歯の根元部分にある骨を削って抜歯を行います。
④歯肉粘膜フラップ術
抜歯後、削った骨の表面を整形し、滑らかに仕上げたうえで薬剤を充填し、剥がした歯肉を縫合して抜歯部位をしっかりと閉じます。
⑤抗生剤の塗布
すべての歯周ポケットに歯科用の抗生剤軟膏を注入し、処置後の炎症や感染の予防を図ります。
術後の様子と経過
処置後は麻酔からの回復も良好で、その後の食欲も問題なく、ごはんをしっかり食べてくれたとのことでした。
飼い主様が気にされていた強い口臭も解消し「やっぱり痛みや不快感があったのかもしれない」と安堵された様子でした。現在はご自宅でもオーラルケアに取り組んでいただいており、経過は良好です。
見過ごしやすい猫の歯周病|放置によるリスクとは?
歯周病になっても猫は痛みを表に出しにくく、気づいたときにはかなり進行しているケースもあります。
歯周病が進行すると、歯ぐきの炎症だけでなく、顎の骨が溶けたり、細菌が血流に乗って内臓に悪影響を及ぼしたりすることもあるので注意が必要です。
「歯石が少ないから大丈夫」「食欲があるから平気」と思っていても、見えない部分で炎症が進行していることもあるため、口臭やぐらつきといったサインを見逃さず、早めにチェックを受けることが大切です。
まとめ|早期発見と継続的なケアで健康なお口を守りましょう
今回のように、目立つ症状がなくても歯周病が進行していることは少なくありません。一方で、適切なタイミングで処置を行うことで、痛みや不快感を減らし、快適な日常を取り戻せるケースも多くあります。
「最近ちょっと口臭が気になる」「歯みがきが難しい」そんなお悩みがある方は、ぜひ一度かず動物病院までご相談ください。
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