2025.06.12 【症例紹介】5歳6カ月ミックス犬の歯冠修復|歯が欠けたときの正しい対処法とは?
愛犬がおやつをかじっていたら、歯が欠けてしまった――そんな場面に出くわしたら、驚きと不安でいっぱいになるのではないでしょうか。
実は、硬いおやつやおもちゃが原因で歯が折れたり欠けたりするケースは少なくなく、状況によっては早急な処置が必要になります。
今回は、左上顎の奥歯が欠けたミックス犬の女の子に行った歯冠修復の症例をご紹介します。
■目次
1.症例情報(概要)
2.ご相談内容とご来院時の状態
3.検査結果と治療方針
4.処置の流れ
5.術後の様子と経過
6.歯の欠けを放置することのリスク
7.まとめ|硬いものによる歯のトラブルにもご注意を
症例情報(概要)
・種類:犬(ミックス)
・年齢:5歳6カ月
・性別:避妊メス
・体重:17.7kg
・主訴:左上顎の奥歯が欠けた
・病名:歯冠破折(神経露出なし)
・処置内容:全身麻酔下での歯石除去および歯冠修復
・術後経過:再破損なし/経過良好
ご相談内容とご来院時の状態
飼い主様からは「硬いおやつをかじっていたところ、奥歯が欠けてしまった」とのことでご来院いただきました。
痛みや食欲不振などの明らかな不調は見られませんでしたが、診察の結果、左上顎の奥歯に欠損が確認されました。
検査結果と治療方針
歯が欠けた範囲は比較的小さく、血管や神経が露出するほどの深さではなかったため、今回は抜歯ではなく「歯冠修復」という処置を行う方針となりました。
<治療方針>
・超音波スケーラーによる全体の歯石除去
・欠けた歯の歯冠修復
・最終研磨による仕上げと再発予防
処置の流れ
まずは全身麻酔を安全に行うために術前の血液検査を実施し、全身状態に問題がないことを確認したうえで、以下の処置を行いました。
①スケーリング(歯石除去)
歯冠修復に先立ち、全体的な歯石を超音波スケーラーで丁寧に除去します。
②ポリッシング(研磨)
歯石を除去した歯の表面に2種類の研磨剤を使い分けて仕上げ、歯石の再付着を防ぎます。
③歯冠修復
欠けた部分に薬剤を塗布し、特殊な光を照射して硬化。形状を整えたうえで、最終仕上げとして研磨を施します。
術後の様子と経過
今回のケースでは、幸いにも神経が露出する手前の段階で留まっており、抜歯を避けることができました。その後の経過も良好で、欠けた部分の再破損もなく、現在は安定した状態を保っています。
処置後は、硬いおやつやおもちゃなどによる再発のリスクを避けるため、食生活やケア方法についても飼い主様にご説明しました。
歯の欠けを放置することのリスク
「歯が少し欠けただけだから大丈夫」と思ってしまいがちですが、そのままにしておくと、思わぬトラブルにつながることがあります。欠けた部分から細菌が入り込むと、神経まで到達して激しい痛みや感染を引き起こし、最終的には抜歯が必要になるケースも少なくありません。
また、犬は人間よりもはるかに強い咬合力を持っているため、欠けた箇所にさらに負担がかかると、破損が広がってしまうおそれもあります。
一見すると小さな問題に見えても、目に見えない部分で状態が悪化していることもあるため「いつもと違う」と感じたら早めの受診を心がけましょう。
まとめ|硬いものによる歯のトラブルにもご注意を
今回のように、硬いおやつやおもちゃが原因で歯が欠けてしまうことは珍しくありません。ですが、早期に対処することで、抜歯を避けて歯を残すことが可能になる場合もあります。
愛犬の歯のトラブルは見逃しやすいものですが、「いつもと違う」「ちょっと気になる」と感じたときが、受診のタイミングです。気になる症状がある際は、ぜひかず動物病院までご相談ください。
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