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2024.03.21 犬と猫の「歯の疾患(病気)」について

愛犬や愛猫と健康な生活を送るためには、適切な食事や運動だけでなく、歯の健康にも注意を払う必要があります。犬と猫も人間と同様に、歯の疾患に悩まされることがあり、気づかず放置していると、命を落とすような おそろしい病気を引き起こすこともあります。

そこで今回は、犬と猫に多い歯科疾患についての原因や症状、ご家庭でのケア方法について詳しくお話します。

■目次
1.犬や猫に多い歯科疾患について
2.歯科疾患の診断方法
3.治療方法
4.予防策と日常ケア
5.まとめ

犬や猫に多い歯科疾患について

歯周病
歯周病は、歯の表面や歯周ポケットにやわらかい歯垢(食べかすなど、プラークとも呼ばれます)がたまることで起こります。歯周病の初期段階に歯肉にのみ炎症がある状態のことを歯肉炎と呼びます。この時点ではほとんど症状は見られません。しかし、時間が経過するにつれ、次第に他の歯周組織にも炎症が広がると歯周炎と呼ばれる状態になります。
成犬・成猫では3歳以上の約80%が歯周病をもっているとも言われています。

よく見られる症状として、口臭や歯茎の赤み、腫れ、痛みなどがあります。

また、歯周病の原因菌が血液を介して全身を循環することにより、心臓や腎臓などの全身性疾患にも関係していると言われています重症化すると歯の根元の部分で化膿や顔面の腫脹を引き起こし、周囲の骨が溶けて口と鼻がつながる口腔鼻腔瘻や、顎の骨折も引き起こします

猫の歯肉口内炎
猫の歯肉口内炎は以前より難治性口内炎と言われており、獣医師を悩ます疾患の一つです。
主に歯肉、頬粘膜、口腔尾側粘膜に多く発生し左右対称であり、悪化すると舌や口唇などにまで拡大します。
痛みや不快感が激しく
・よだれや口腔内からの出血
・口臭の増加
・ご飯を食べたくても食べられない
・食事中に叫び声をあげる
・体重減少
・痛みにより性格が狂暴になる 
などの症状がみられます。

歯肉口内炎のはっきりとした原因は解明されていませんが、下記のような要因ではないかと考えられています。
・カリシ・ヘルペスやエイズなどのウイルス感染
・口腔内細菌の関与
・歯石の蓄積
・歯周病
・免疫異常 など

口腔内腫瘍
口腔内腫瘍は、犬はすべての腫瘍の約6%、猫では約3%を占めるといわれています。

犬は多い順に、悪性黒色腫(メラノーマ)、扁平上皮癌、線維肉腫、棘細胞性エナメル上皮腫がみられます
猫は、60%以上が扁平上皮癌だと考えられ、まれに線維肉腫が発生します。これらは悪性腫瘍(がん)のため、種類によっては他の臓器に転移することもあります。

口腔内の違和感や痛みなどによる食欲不振や顔面の腫脹などで飼い主様が異常に気づきやすい点が特徴的です。他にも、嚥下障害や鼻出血、よだれの増加、出血、口臭」などの症状も見られます。

破折
破折とは、歯が割れた、欠けた、折れた、短くなったなどの症状を指します。犬猫においてはよく遭遇する歯の外傷です。
硬いおもちゃやおやつを噛んだり、事故や転倒でぶつかったりすることで発生します。

また歯が割れた際、神経や血管などが露出していると強い痛みが生じます。また、そのまま放置すると歯髄炎・歯髄壊死・根尖周囲膿瘍・敗血症などに進行することがあるため、早期の治療が必要です。

破折については、「歯の破折とその治療法」で詳しく解説しています

吸収病巣(主に猫)
吸収病巣とは、猫に多く見られ、破歯細胞により歯が骨に吸収されてしまう疾患です。加齢とともに罹患率は増加し、3歳以上の猫の半数以上がかかっているという報告もあります。

歯の内部で病気が進み外見ではわかりにくく、痛みや違和感から食欲の低下、よだれの増加、歯ぎしり、口臭などがみられます。
また歯肉の腫れや出血、歯の付け根付近に小さな穴が開くことがあり、吸収が進むと歯が脆くなり突然折れることもあります。

 

歯科疾患の診断方法

口腔内検査
歯と歯肉の状態、歯垢や歯石の蓄積、歯肉の退縮や炎症、および歯の損傷や喪失を評価します。

X線検査
特に歯周病の進行状況や、歯根の問題、腫瘍の有無やその浸潤程度、吸収病巣の診断などにX線検査を行います。

生検
口腔内腫瘍が疑われる場合、腫瘍の一部を採取して生検を行うことがあります。この検査により、腫瘍の種類や悪性度、どのような治療が最適かを判断します。

歯の疾患が他の病気に関連している可能性がある場合は、血液検査やCT検査、MRI検査などを行うこともあります。

 

治療方法

疾患の種類や進行度に応じて異なりますが、スケーリングや抗生物質・抗炎症薬・インターフェロンなどによる治療やサプリメントの使用、必要に応じて抜歯処置を実施します。そして口腔内腫瘍に対しては外科手術や放射線治療、化学療法といった治療も検討します。

 

予防策と日常ケア

犬と猫の歯の健康を維持するために最も重要なことの一つが、「定期的な歯磨き」です。歯磨きは歯垢の蓄積を防ぎ、歯の疾患のリスクを低減します。できれば毎日、少なくとも週に数回は磨くようにしましょう

特にウェットフードは食べかすが残りやすいため、歯垢が付きやすくなるため注意が必要です。

 

まとめ

歯の痛みや違和感は食事が取りにくくなるだけでなく、愛犬愛猫にとって大きなストレスとなり、QOL(生活の質)を著しく下げる要因となってしまいます。また、一度悪化すると簡単には治らないため、予防が非常に重要です。ご家庭で日々のケアをしていただくとともに、定期的に病院での歯のクリーニングを実施するなど、口の中を清潔に保ちましょう。

また、当院ではワンちゃんや猫ちゃんの歯科検診を行っています。検診では、歯の汚れの程度や歯肉の状態、口腔内に腫瘍が無いかなどのチェックを行います。同時に、簡単な歯のクリーニングや歯肉炎の治療、歯磨き指導や最適なデンタルグッズのご提案なども行っています。

愛犬、愛猫の歯について気になる方は、ぜひ一度ご相談ください。

 

横浜市南区
犬・猫・うさぎ・ハムスター・フェレットの動物診療を行う
かず動物病院
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