愛犬の口臭や歯の汚れといったお口の変化の裏には、歯石の付着や歯周病の進行が隠れていることがあります。

歯石を放置してしまうと、歯ぐきの炎症や歯のぐらつき、痛みなどのトラブルにつながることも。早めに取り除くことで、こうしたリスクを防ぐことができます。

今回は、口臭と歯のぐらつきが気になるということでご相談いただいた、チワワの女の子の症例をご紹介します。

■目次
1.症例情報（概要）
2.ご相談内容とご来院時の状態
3.検査と治療方針
4.処置の流れ
5.術後の様子と経過
6.口臭・歯石・歯のぐらつきを放置するリスク
7.まとめ｜歯周病の早期発見と早めのケアが大切です

症例情報（概要）

・犬種：チワワ
・年齢：5歳4カ月
・性別：避妊メス
・体重：2.3kg
・主訴：口臭・歯石・歯のぐらつき
・病名：中等度〜重度歯周炎
・処置内容：全身麻酔下でのスケーリング・抜歯・歯肉粘膜フラップ術
・術後経過：麻酔からの覚醒良好／当日から食欲あり／経過良好

ご相談内容とご来院時の状態

今回のご相談は「口臭がきつく、歯石がたまって歯がぐらぐらしている」とのことでした。
お話を伺うと、ご自宅では歯磨きを嫌がるため、なかなかデンタルケアが難しかったそうです。

検査結果と治療方針

診察では全体的に歯石の付着があり、特に奥歯には歯のぐらつきが目立つ状態で、奥歯を中心に複数の歯で中等度から重度の歯周炎が確認されました。

歯周病が進行した歯は残しておくと痛みや炎症が続くため、今回は以下の治療方針をご提案しました。

＜治療方針＞

・超音波スケーラーによる歯石除去
・歯周病が進行した歯の抜歯
・抜歯部の歯肉粘膜フラップ術

ご家族と相談のうえ、この方針で処置を行うこととなりました。

処置の流れ

まずは全身麻酔に向けた安全確認として、以下の術前検査を実施し、麻酔に問題がないことを確認しました。

＜術前検査＞

・血液検査：全身状態、内臓機能の確認
・レントゲン検査：骨や歯の状態を確認
・超音波検査：内臓や心臓の状態を確認

続いて、以下の手順で処置を行いました。

①スケーリング（歯石除去）
歯の表面に付着した歯石を、専用の機械（超音波スケーラー）を使って丁寧に取り除きます。

②ポリッシング（研磨）
歯石除去後の歯の表面はざらつきやすいため、2種類の研磨剤を使い分けて、歯の表面をなめらかに整え、歯石の再付着を防ぎます。

③抜歯
歯周病が進行し、ぐらつきや炎症が強い歯は、残しておくと痛みや感染リスクがあるため抜歯を行います。

④歯肉粘膜フラップ術
抜歯した部分の歯ぐきを剥がし、傷んだ骨の表面を整えたうえで、歯ぐきをしっかり縫い合わせて穴を塞ぎます。これにより治癒を早め、感染のリスクを減らします。

⑤抗菌剤の塗布
歯ぐきの隙間（歯周ポケット）に抗生剤入りの軟膏を注入し、炎症や治療後の細菌感染を予防します。

今回は歯周病の進行がひどかったため、多くの歯を抜歯することになりましたが、できるだけ痛みや負担が少なくなるように配慮しながら処置を進めました。

術後の様子と経過

麻酔からの覚醒も問題なく、その日の夜にはしっかりとごはんを食べてくれたとのことでした。縫合した部位も順調に回復し、飼い主様が気にされていた口臭も処置後には解消されています。

飼い主様からも「処置してよかった」とのお声をいただいており、現在は残っている歯をできるだけ健康に保つため、定期的に歯科検診に通っていただきながら、ご家庭と病院でのケアを並行して行っています。

口臭・歯石・歯のぐらつきを放置するリスク

口臭や歯石、歯のぐらつきは、歯周病が進行しているサインかもしれません。

歯周病が進行すると、歯ぐきの炎症から顎の骨が溶けたり、細菌が血流に乗って心臓や腎臓など他の臓器に悪影響を与えたりすることも知られています。

特に小型犬では歯石の付きやすさや歯ぐきの弱さもあり、比較的若いうちからトラブルが起こりやすい傾向があります。

「まだ大丈夫」と思っている間に進行してしまうことも多いため、口臭や歯石、歯のぐらつきといったサインを見逃さず、早めに動物病院でチェックを受けることが大切です。

まとめ｜歯周病の早期発見と早めのケアが大切です

歯周病は、一度進行すると元に戻すのが難しい病気です。しかし、今回のように歯周病が進んでしまった場合でも、適切な処置によって痛みや不快感が改善し、愛犬が快適に過ごせるようになるケースもたくさんあります。

少しでも気になる症状がある場合や、デンタルケアが難しいと感じている場合は、ぜひ一度かず動物病院にご相談ください。

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