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2026.08.17 【症例紹介】15歳トイプードルの斜頚・眼振・起立困難|突然立てなくなったシニア犬の検査と治療

犬では、体のバランスを保つ「前庭」と呼ばれる部分に異常が生じると、斜頚(首が傾く)、眼振(目が揺れる)、ふらつきなどの前庭症状が見られることがあります。

ただし、こうした症状を起こす原因はひとつではありません。耳の病気や脳の異常などが関係していることもあり、原因を見極めたうえで治療方針を考えることが大切です。

今回は、夜中に突然立てなくなり、斜頚や眼振、嘔吐などが見られた15歳のトイプードルの症例をご紹介します。

■目次
1.症例情報(概要)
2.ご相談内容とご来院時の状態
3.検査結果と治療方針
4.治療と処置の流れ
5.治療後の様子と経過
6.犬の斜頚・眼振などの前庭症状について
7.まとめ

症例情報(概要)

種類:犬(トイプードル)
年齢:15歳0か月
性別:メス
体重:2.7kg
主訴:突然の起立困難、失禁、頻回の嘔吐
診断:甲状腺機能低下症、左中耳炎、加齢性の脳萎縮
治療内容:ホルモン剤・抗生剤による治療、サプリメントを用いた管理
現在の経過:眼振・ローリングは消失し、食欲・元気も改善

ご相談内容とご来院時の状態

夜中に突然立てなくなり、失禁した後、嘔吐を繰り返すようになったとのことでご相談いただきました。

診察では、左側に首が傾く斜頚、体が転がってしまうローリング、両眼が左右に揺れる水平眼振が確認されました。

斜頚や眼振、ローリングは、体のバランスを保つ前庭系に異常が生じた際に見られることがある症状です。こうした前庭症状を起こす原因は多岐にわたるため、背景にどのような異常があるのかを詳しく調べることにしました。

検査結果と治療方針

まず血液検査を行ったところ、甲状腺ホルモンの低下が認められました。また、身体検査では左耳の汚れが確認されました。

一方、レントゲン検査や超音波検査では、今回の症状につながる明らかな異常は認められませんでした。

前庭症状は耳の奥にある中耳・内耳の異常だけでなく、脳腫瘍や脳炎など脳の病気でも見られることがあります。そこで、より詳しく原因を調べるため、二次診療施設と連携してCT・MRI検査を実施。その結果、左耳の中耳炎加齢性の脳萎縮が確認されました。

今回の症例では、血液検査で確認された甲状腺ホルモンの低下も含め、それぞれの異常に応じた治療を行いながら経過を見ていく方針としました。

治療方針

・甲状腺機能低下症に対してホルモン剤を投与
・中耳炎に対して抗生剤を投与
・加齢性の脳萎縮に対してサプリメントを使用
・症状の変化を確認しながら経過観察

治療と処置の流れ

今回の症例では複数の異常が確認されたため、それぞれの状態に合わせて治療を行いました。

① 甲状腺機能低下症の治療
血液検査では甲状腺ホルモンの低下が認められたため、甲状腺ホルモンを補うホルモン剤による治療を開始しました。甲状腺機能低下症では、体内で不足している甲状腺ホルモンを補いながら、症状や血液検査の結果を確認していくことが大切です。

② 中耳炎の治療
CT・MRI検査によって確認された左耳の中耳炎に対しては、抗生剤を処方しました。中耳は外から直接確認することが難しい場所にあり、炎症が起こると前庭系に影響して、斜頚や眼振、ふらつきなどにつながることがあります。

③ 加齢性の脳萎縮への対応
今回の検査では、加齢に伴う脳萎縮も確認されました。加齢性の脳萎縮は進行性で、元の状態へ戻すような根本的な治療が難しいため、今回はサプリメントを使用しながら進行を緩やかにすることを目指して経過を見ていくこととしました。

治療後の様子と経過

治療開始後も症状を確認しながら経過観察を続けました。

前庭症状は1週間程度で改善が見られることもありますが、今回の症例では改善までにやや時間がかかり、約3週間で眼振とローリングが消失しました。

現在も斜頚は残っていますが、食欲や元気は改善し、繰り返していた嘔吐も見られなくなっています。全体として経過は良好です。

症状の改善までにかかる時間や残る症状は、その原因や状態によって異なります。今回の症例でも今後の経過を確認しながら、引き続き必要な治療やケアを実施していきます。

犬の斜頚・眼振などの前庭症状について

犬の「前庭」は、頭や体の位置や動きを把握し、バランスを保つために重要な働きをしています。この前庭系に異常が生じると、例えば次のような症状が見られることがあります。

首が左右どちらかに傾く(斜頚)
目が左右や上下などに揺れる(眼振)
まっすぐ歩けない、ふらつく
立てなくなる
同じ方向へ回る、転がる
吐き気や嘔吐が見られる

こうした症状は「前庭障害」や「前庭症状」などと呼ばれますが、原因はひとつではありません。

前庭系は耳の奥から脳にかけて関係しているため、中耳炎・内耳炎など耳の病気や、脳炎・脳腫瘍など脳の病気など、さまざまな原因で似た症状が表れることがあります。また、高齢犬では明確な原因を特定できない前庭障害が見られることもあります。

前庭症状は、原因によって回復までの経過や必要なケアが大きく異なるため、必要な検査を行い、原因を確認することが大切です。

▼前庭疾患についてはこちらで詳しく解説しています

まとめ

今回は、夜中に突然立てなくなり、斜頚や眼振、ローリング、嘔吐などが見られた15歳のトイプードルの症例をご紹介しました。CT・MRI検査を含めて原因を詳しく調べたことで、複数の異常を把握し、それぞれに必要な治療や管理につなげることができました。

かず動物病院では、症状そのものだけでなく、その子の生活や飼い主様の介護・ケアの負担も含めて考えながら診療を進めています。「急に立てなくなった」「首が傾いている」「目が揺れている」といった変化が見られた場合は、お気軽にご相談ください。

 

横浜市南区
犬・猫・うさぎ・ハムスター・フェレットの動物診療を行う
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