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2025.11.05 【症例紹介】5歳9カ月ミックス猫の全臼歯抜歯術|歯肉口内炎による食欲低下からの回復

「ごはんを食べたそうにしているのに、口が痛くて食べられない…」そんな様子を見て、心配になった経験のある飼い主様もいらっしゃるかもしれません。

今回ご紹介するのは、歯肉口内炎によって食事がとれなくなっていた猫の症例です。内科治療から外科治療までの経過を通して、症状がどのように改善していったのかをご紹介します。

■目次
1.症例情報(概要)
2.ご相談内容とご来院時の状態
3.検査結果と治療方針
4.治療と処置の流れ
5.術後の様子と経過
6.猫の歯肉口内炎について
7.まとめ

症例情報(概要)

種類:猫(ミックス)
年齢:5歳9か月
性別:去勢オス
体重:3.9kg
主訴:口を痛がり、フードや水がうまく摂れない
病名:歯肉口内炎
処置内容:全臼歯抜歯術(歯石除去併用)
術後経過:食欲・痛みともに改善し、現在は良好に経過

ご相談内容とご来院時の状態

口を痛がってごはんが食べられない」「お水を飲むときも痛そう」とのことでご来院いただきました。

診察では、口腔内の粘膜に赤みと炎症が広がっており、わずかに触れるだけでも痛みを感じている様子でした。検査の際には痛みのため鳴いてしまう場面もあり、強い不快感がうかがえました。

検査結果と治療方針

検査の結果、両側の口角部に発赤(口内炎)があり、臼歯周囲にも歯肉炎が確認されたことから、中等度〜重度の歯肉口内炎と診断しました。

治療法としては次の2つの方法が考えられたため、それぞれの利点や体への負担について、飼い主様に丁寧にご説明しました。

抗炎症剤やインターフェロン製剤、サプリメントを用いた内科的治療
抜歯を中心とした外科的治療

話し合いの結果、まずは身体への負担が少ない内科治療から始め、反応を見ながら外科治療も視野に入れて経過をみる方針となりました。

治療方針

・内科的治療(抗炎症剤・インターフェロン製剤・サプリメントの投与)を実施
・通院で経過を観察し、食欲・痛み・口腔内の炎症状態を定期的に確認
・効果の持続が難しい場合は、外科的治療(全臼歯抜歯術)へ切り替えを検討

治療と処置の流れ

歯肉口内炎の治療は、まず内科的に炎症を抑えることから始め、経過を見ながら外科的処置へと移行しました。治療全体の流れは以下のとおりです。

①内科的治療の開始
抗炎症剤やインターフェロン製剤、サプリメントを用いて炎症のコントロールを行います。
定期的に通院していただき、食欲や痛みの程度、口腔内の状態を丁寧に確認しながら治療を続けました。

②経過観察と治療方針の見直し
内科治療を始めてしばらくはごはんも食べられるようになり、良い反応が見られました。
しかし時間の経過とともに効果が弱まり、炎症が再び強くなる傾向が見られたため、飼い主様と相談のうえで外科的治療への切り替えを決定しました。

③外科的処置(全臼歯抜歯術+歯石除去)
全身麻酔下で歯石を除去した後、臼歯をすべて抜歯しました。
歯の根元に炎症の原因が残ると再発につながるため、できる限り刺激源を取り除くように慎重に処置を進めました。

手術後は、痛みや炎症のコントロールを行いながら回復をしっかりサポートします。

術後の様子と経過

手術から数日で食欲が戻り始め、1週間ほどで痛みのない状態でしっかり食事ができるようになりました。口の中の赤みも徐々におさまり、現在は歯肉の発赤もほとんど消失しています。

再発防止のため、現在も定期的に診察を行いながら、状態を丁寧に見守っています。ごはんをおいしそうに食べる姿が戻り、飼い主様にも安心していただけました。

猫の歯肉口内炎について

歯肉口内炎とは、口の中の粘膜や歯ぐきに炎症が起こる病気です。猫によく見られ、慢性的な痛みや不快感のためにごはんが食べられなくなることもあります。

原因はさまざまで、次のような複数の要因が重なって発症すると考えられています。

歯垢や歯石の蓄積
ウイルス感染(カリシウイルス・ヘルペスウイルスなど)
免疫反応の異常

初期では軽い赤みやよだれが見られる程度ですが、進行すると食欲低下や体重減少、水を飲むときの痛みなど、日常生活に支障が出てしまうことがあります。口の痛みが続くことで性格が変わったように見える子もいるほど、猫にとってつらい病気です。

歯肉口内炎は完治が難しい病気といわれることもありますが、抗炎症剤やサプリメントなどによる内科的治療で炎症を抑えたり、必要に応じて外科的治療を行うことで、食欲や生活の質が大きく改善するケースも少なくありません。少しでも気になる様子があれば、早めにご相談いただくことをおすすめします。

まとめ

歯肉口内炎は猫に多く見られる病気のひとつですが、治療やケアを続けることで痛みを和らげ、少しずつ穏やかな毎日を取り戻せることも少なくありません。

今回の症例のように、内科的な治療で様子を見ながら、その子の状態に合わせて外科的治療を行うことで、再びしっかりと食事を楽しめるようになるケースもあります。

かず動物病院では、治療だけでなく、治療後の経過観察やご家庭でのケアまで丁寧にサポートしています。「最近ごはんを食べにくそう」「口の中が赤い気がする」など、気になる様子があれば、どうぞお気軽にご相談ください。

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