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2024.09.30 猫の甲状腺機能亢進症┃見逃しやすい症状と早期発見の重要性

甲状腺機能亢進症は、猫の喉にある一対の甲状腺から過剰にホルモンが分泌される病気です。発症率は全猫の5〜10%程度ですが、特に7歳以上の高齢猫に多く見られます。体重減少や食欲増進、心臓や腎臓への負担が生じるため、早期発見と適切な治療が重要です。

そこで今回は、猫の甲状腺機能亢進症の症状や対策についてお話しますので、ぜひ参考にしてください。

■目次
1.猫の甲状腺機能亢進症の主な症状
2.見逃されやすい理由と早期発見の重要性
3.診断方法:獣医師による検査の重要性
4.併発疾患への注意
5.予防と日常のケア
6.まとめ
7.よくある質問

 

猫の甲状腺機能亢進症の主な症状

甲状腺ホルモンは分かりやすく言うと、体全体を活発にするはたらきがあり、過剰に分泌されると、体は常に「全力疾走」しているような状態となります。そのため、次のような症状が見られます。

食べても痩せる、または食べる量が変わらないのに体重が減る
大きな声で鳴く
活動的になる
多飲多尿
嘔吐や下痢が起こる
被毛がパサつき、質が悪くなる

一部の猫では、食欲増進ではなく反対に食欲不振になる子もいます。これらの症状は緩やかに進行するため、特に高齢猫では「年のせい」と見過ごされやすいのが特徴です。

 

見逃されやすい理由と早期発見の重要性

甲状腺機能亢進症は、症状が緩やかに進行するため、飼い主様が気づきにくい病気です。特に体重減少が「老化」と誤解されることが多く、病気のサインを見逃してしまうことがあります。また、元気があり食欲もあるため、問題に気づきにくいケースも少なくありません。

しかし、甲状腺機能亢進症を放置すると心臓や腎臓・肝臓に負担がかかり、全身の健康状態が悪化するため、早期発見が重要です。

 

診断方法:獣医師による検査の重要性

甲状腺機能亢進症の治療法は大きく分けて「内科療法」「外科療法」「食事療法」の3つがあります。それぞれの方法にはメリットとデメリットがあり、猫の状態や飼い主様のライフスタイルに応じて選択します。

内科療法
甲状腺ホルモンの過剰分泌を抑える薬(抗甲状腺薬)を使用する方法です。検査結果により薬の投与量を調整できるため、柔軟な対応が可能ですが、生涯にわたる薬の服用が必要です。

また、下痢や嘔吐などの副作用が現れることがあります。

外科療法
甲状腺を外科的に摘出する手術です。成功すれば甲状腺ホルモンが分泌されなくなるため、根本的な治療となりますが、全身麻酔や手術自体のリスクがあります。特に高齢猫では手術のリスクが高くなるため、慎重に検討する必要があります。

食事療法
甲状腺ホルモンの原料となるヨウ素を制限した処方食を与える方法です。比較的簡単に始められ、これだけで症状のコントロールができることもあります。ただし、この処方食のみしか与えてはいけないので食の好みがある猫には難しいことがあります。

どの治療方法を選ぶかは、猫の症状や体調に応じて獣医師とよく相談しながら決めることが大切です。

 

併発疾患への注意

甲状腺ホルモンの過剰分泌は、心臓や腎臓・肝臓に負担をかけ、心筋症や腎臓病・肝臓病・高血圧などを併発させることがあります。これらの病気により甲状腺機能亢進症の治療が複雑化し、病状のコントロールが困難となることがあります。

併発疾患が発生していないか、また併発疾患が悪化していないかを確認するため、定期的に血液検査や血圧測定、エコーなどを行い経過観察をしていくことが大切です。

 

予防と日常のケア

甲状腺機能亢進症を予防することは難しいため、早期発見が非常に重要です。特に7歳以上の猫では、年に1〜2回健康診断を受け、血液検査で甲状腺ホルモンの値を確認することが大切です。
猫の健康診断(ねこちゃんドック)の重要性についてこちらで詳しく解説しています

また、日常的に体重測定を行ったり食欲の変化に気を配ったりして、異変があれば早めに獣医師に相談しましょう。日常的なケアと迅速な対応が、病気の進行を防ぐポイントです。

 

まとめ

猫の甲状腺機能亢進症は、症状が見逃されやすい病気ですが、定期的な健康診断を受けることで早期発見が可能です。適切な治療を早期に始めることで、病気の進行を抑えることができます。また、この病気は長期的な治療が必要な場合が多いため、獣医師と密に連携しながら、猫に最適な治療法を見つけることが大切です。

 

よくある質問(FAQ)

Q.猫の甲状腺機能亢進症は治りますか?
A.手術で完治することがありますが、通常は生涯にわたる治療が必要です。

Q.どのくらいの期間治療が必要ですか?
A.手術しない場合、永続的に治療が必要です。

Q.予防法はありますか?
A.根本的な予防法はありませんが、定期的な健康診断で早期発見を目指しましょう。

Q.高齢猫でも治療は可能ですか?
A.はい。内服薬や食事療法など、負担の少ない方法で治療が可能です。

他にも疑問・質問などあればお気軽にお問い合わせください。

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