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2025.06.12 猫のフィラリア予防|通年対策の必要性と最適な予防法を獣医師が解説

「フィラリアは犬の病気でしょう?」
そう思われている飼い主様も少なくないかもしれません。しかし、近年では猫のフィラリア症のリスクについても少しずつ知られるようになり、「うちの子も予防した方がいいのでは…」とご相談いただくケースが増えています。

特に室内飼育の猫の場合「外に出ないから蚊に刺されることはないだろう」と思われがちですが、蚊は窓の開け閉めや玄関の出入りなど、わずかな隙間からでも、蚊は簡単に室内へ入り込んでしまいます。実際、フィラリア症と診断される猫の多くが、完全室内飼いであったという報告もあるほどです。

猫のフィラリア症は、犬と比べてごく少数の寄生でも命に関わる重篤な症状を引き起こすため、予防こそが最善の対策となります。

今回は、猫のフィラリア症の正しい知識、通年予防の重要性、そして最適な予防法について詳しく解説します。

■目次
1.猫のフィラリア症とは?
2.猫のフィラリア症の症状と危険性
3.通年予防の重要性
4.猫用フィラリア予防薬の種類と特徴
5.フィラリア予防において知っておきたいこと
6.まとめ|猫のフィラリア症は予防が最良の選択

猫のフィラリア症とは?

フィラリア(犬糸状虫)は、蚊を媒介して感染する寄生虫で、心臓や肺に寄生し、命に関わる疾患を引き起こします

犬の場合は心臓(特に右心)や肺動脈に多数寄生し、咳、運動不耐性、腹水、心不全などの症状を引き起こしますが、猫の場合は感染後の影響が少し異なります。

猫では、心臓よりも肺に強く影響を及ぼす傾向があり、少数の寄生でも重篤な炎症や呼吸器症状を起こすのが特徴です。さらに、猫はフィラリアに対する免疫反応が強く、感染後すぐに虫体が死滅するケースも多いため、診断が難しいこともあります。

感染経路

感染経路は、フィラリアに感染している犬やその他の動物から蚊が血を吸い、次に猫を刺すことで、体内へフィラリアの幼虫(ミクロフィラリア)が侵入するという流れです。

蚊は窓の開け閉めや網戸の隙間から簡単に室内へ侵入できるほか、飼い主様の衣服や荷物に付着して持ち込まれることもあります。そのため、完全室内飼いであってもフィラリア症のリスクをゼロにはできないのです。

猫のフィラリア症の症状と危険性

猫のフィラリア症では、次のような症状が見られることがあります。

咳、呼吸困難
急な元気消失、嘔吐
食欲不振、体重減少
失神や突然死

猫ではフィラリアの寄生数が少ないため、症状が目立たないまま進行し、突然、重篤な呼吸障害や循環障害を起こして亡くなることもあります。

また、猫のフィラリア症は肺に深刻なダメージ(HARD:Heartworm Associated Respiratory Disease)をもたらし、犬と比べても治療が非常に困難なため、予防が唯一の防御策とされています。

通年予防の重要性

フィラリア予防というと「夏だけすれば十分」というイメージを持たれがちですが、近年の温暖化や都市部のヒートアイランド現象により、蚊の活動期間は以前よりも長くなっています。そのため、動物病院では通年でのフィラリア予防を推奨することが増えています。

さらに、現在の猫用予防薬は、フィラリアだけでなくノミ・ダニの駆除効果も兼ね備えたオールインワンタイプが主流となっています。通年予防を行うことで、フィラリアを含むさまざまな寄生虫から一度に愛猫を守ることができるのです。

「室内飼いだから大丈夫」と安心せず、生活環境や地域性も考慮しながら、獣医師と相談して適切な予防期間を決めることが大切です。

猫用フィラリア予防薬の種類と特徴

現在、猫用のフィラリア予防薬には主に以下の2タイプがあります。

スポットタイプ(首の後ろに滴下)
投薬の手間が少なく、ノミ・ダニ・消化管寄生虫も同時に駆除できる製品が多くあります。

錠剤タイプ(内服)
嗜好性が良く、食べることが好きな猫に向いていますが、吐きやすい傾向のある猫には注意が必要です。

猫の性格や飼い主様のライフスタイルに合わせて、最適な投薬方法を選べるのも、現在の予防薬の大きな魅力です。

例えば、食べることが好きな子には嗜好性の高い錠剤タイプが、触れられるのが苦手な子にはスポットタイプ(首の後ろに滴下するタイプ)が向いています。それぞれの子に合った方法を選ぶことで、無理なく、ストレスの少ないフィラリア予防が可能になります。

フィラリア予防において知っておきたいこと

フィラリア予防を始める前に、特に押さえておきたいポイントをご紹介します。

事前の健康チェックが大切

フィラリア予防を始めるにあたっては、まず健康状態をしっかり確認することが欠かせません。

犬では、感染の有無を事前検査(抗原検査)で確認するのが一般的ですが、猫の場合は虫体数が少ないため、検査だけで確定診断を行うことが難しいケースもあります。

それでも、持病がある猫や体調に不安がある猫では、事前の診察によって予防薬を安全に使えるかどうかを確認することが重要です。安心して予防を進めるためにも、事前のチェックをおすすめします。

継続的な予防の重要性

フィラリア予防薬は、感染してしまった後に駆除するものではありません。体内に侵入した幼虫を早期に駆除し、フィラリア症の発症を防ぐことが目的です。

そのため、毎月決まったタイミングで、途切れずに投与を続けることがとても大切です。「うっかり投与を忘れてしまった」「何か月も間が空いてしまった」といった場合には、感染リスクが高まるおそれがあります。

愛猫をフィラリア症から守るためには、予防を止めず、確実に継続することが何よりのポイントです。

まとめ|猫のフィラリア症は予防が最良の選択

猫のフィラリア症は目立った症状が出にくいものの、進行すれば命に関わる重大な病気です。「完全室内飼いだから大丈夫」と過信せず、蚊の侵入リスクやフィラリア症の治療困難性を踏まえると、予防こそが最良の選択であると言えるでしょう。

通年予防が推奨される現在では、猫の性格や生活スタイルに合わせて、ストレスの少ない予防法を選ぶことができます。

当院では、飼い主様とご相談しながら、一頭一頭に最適なフィラリア予防プランをご提案しております。少しでも不安なことがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。

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