2026.07.16 猫の甲状腺機能亢進症|食べているのに痩せる?見逃しやすい症状と早期発見のポイント
「最近よく食べるのに、体重が減ってきた」
「以前より活発になった気がする」
「夜中によく鳴くようになった」
シニア猫では、このような変化が見られることがあります。年齢による変化と思われがちですが、実は「甲状腺機能亢進症」という病気が隠れているケースも少なくありません。
甲状腺機能亢進症は、早い段階で気づき、適切な治療を始めることで、症状をコントロールしながら過ごせる可能性があります。
今回は、猫の甲状腺機能亢進症の症状や診断方法、治療についてご紹介します。

■目次
1.猫の甲状腺機能亢進症とは?主な症状について
2.甲状腺機能亢進症はどのように診断する?
3.現在の治療について
4.予後について|早めの治療が大切です
5.よくある質問(FAQ)
6.まとめ|シニア猫の小さな変化を見逃さないために
猫の甲状腺機能亢進症とは?主な症状について
甲状腺機能亢進症とは、首のあたりにある「甲状腺」から分泌される甲状腺ホルモンが過剰になる病気です。
甲状腺ホルモンには、体の代謝を活発にする働きがあります。そのためホルモンが過剰になると、体は常にエネルギーを多く消費している状態となり、「よく食べるのに痩せる」という特徴的な症状が見られるようになります。
この病気は7歳以上の高齢猫で多く見られますが、年齢だけが原因とは限らず、健康診断がきっかけで見つかることも少なくありません。
<主な症状>
甲状腺機能亢進症では、次のような症状が見られることがあります。
・食欲があるのに体重が減る
・水を飲む量や尿の量が増える
・落ち着きがなくなる、活動的になる
・夜鳴きが増える
・嘔吐や下痢
・毛づやが悪くなる
・心拍数が速くなる
・呼吸が速くなる
これらの変化は、高齢猫では「年をとったから」と加齢による変化として受け止められやすい症状でもあるため、注意が必要です。
また、すべての猫で同じ症状が表れるわけではなく、中には食欲が落ちる子もいます。症状の表れ方には個体差があるほか、慢性腎臓病や糖尿病など似た症状が見られる病気もあるため、気になる変化が見られた場合は早めに原因を確認することが大切です。
▼慢性腎臓病についてはこちらで詳しく解説しています
甲状腺機能亢進症はどのように診断する?
甲状腺機能亢進症は、症状だけで診断できる病気ではありません。当院では、次のような流れで状態を確認しています。
・問診
食欲や体重の変化、飲水量、活動性など、ご自宅での様子を詳しくお伺いします。
・身体検査
全身の状態を確認するとともに、首のあたりにある甲状腺の腫れがないかを触診で確認します。
・血液検査
甲状腺ホルモン(T4)などの値を測定します。また、肝臓や腎臓など全身の状態もあわせて確認します。
・必要に応じた追加検査
心臓や腎臓への影響が疑われる場合には、超音波検査やレントゲン検査などをご提案することもあります。
当院では、検査結果を一つひとつ整理しながら、甲状腺機能亢進症の有無だけでなく全身の状態も評価し、その子に合った治療方針をご提案しています。
甲状腺機能亢進症は、健康診断やほかの病気の検査をきっかけに見つかることも少なくありません。症状がなくても定期的に健康診断を受けることで、早期発見につながる場合があります。
▼猫の健康診断についてはこちらで詳しく解説しています
現在の治療について
甲状腺機能亢進症は、かつては治療が難しい病気と考えられていました。しかし現在では、病気の状態や猫の体調に合わせて選択できる治療法が増えています。
<内科治療(お薬)>
もっとも一般的なのが、甲状腺ホルモンの分泌を抑えるお薬による治療です。
治療を始めた後も、血液検査などでホルモン値や全身状態を確認しながら、お薬の量を調整していきます。
<食事療法>
甲状腺ホルモンの材料となるヨウ素を制限した療法食を用いる方法もあります。
ただし、療法食だけで十分な効果が得られるかは猫の状態によって異なります。また、決められた療法食以外の食べ物を口にすると十分な効果が得られないこともあるため、療法食を用いる場合は食事内容を統一することが大切です。
また、市販のフードだけで病気をコントロールすることは難しく、自己判断でフードを切り替えたり、ヨウ素を多く含む食材やおやつを継続して与えたりすることで、治療に影響する可能性もあります。
そのため、食事療法を検討する際は、獣医師の指示のもとで進めるようにしましょう。
<外科治療>
甲状腺を摘出する外科治療が選択されることもあります。
ただし、全身麻酔が必要となることや、猫の年齢や全身状態によって適応が限られるため、実際には内科治療が選択されるケースが多くなっています。
どの治療法が適しているかは、病気の進行具合や全身状態、持病の有無などによって異なります。当院では、それぞれのメリット・デメリットをご説明したうえで、その子に合った治療方針をご提案しています。
予後について|早めの治療が大切です
甲状腺機能亢進症は、適切な治療によって症状をコントロールしながら生活していくことが期待できる病気です。
一方で、治療を行わずに病気が進行すると、心臓や腎臓、肝臓などへの負担が大きくなり、全身の健康状態に影響を及ぼすことがあります。「食欲はあるから元気そう」「年齢のせいだろう」と様子を見るのではなく、気になる変化があれば早めに相談することが大切です。
なお、甲状腺機能亢進症は「甲状腺機能低下症」や「副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)」と混同されることがありますが、甲状腺機能低下症は反対に甲状腺ホルモンが不足する病気で、副腎皮質機能亢進症は犬で多く見られる別のホルモンの病気です。
病気によって原因や治療法は異なるため、病名や症状だけで自己判断せず、気になる変化があれば動物病院で原因を確認することが大切です。どの病気であっても、 早めに状態を把握することで、その子に合った治療やケアにつなげやすくなります。
よくある質問(FAQ)
Q. 食欲があるのに痩せるのは、甲状腺機能亢進症ですか?
必ずしもそうとは限りません。慢性腎臓病や糖尿病など、ほかの病気でも同じような症状が見られることがあります。体重減少が続く場合は、早めに動物病院で検査を受けましょう。
Q. 甲状腺機能亢進症は治りますか?
病気の状態によって異なりますが、多くの場合は治療を続けながら症状やホルモン値をコントロールしていきます。適切な治療によって、普段どおりの生活を送りやすくなる猫も少なくありません。
Q. 治療費はどのくらいかかりますか?
必要な検査や治療内容によって異なります。診察時に現在の状態を確認したうえでご説明いたしますので、お気軽にご相談ください。
Q. 市販のフードでも大丈夫ですか?
市販のフードだけで病気をコントロールすることは難しいため、自己判断で食事を変更することはおすすめできません。食事療法を検討する際は、獣医師へご相談ください。
Q. 治療しないとどうなりますか?
病気が進行すると、心臓や腎臓、肝臓などへ負担がかかり、全身状態が悪化することがあります。気になる症状がある場合は、早めの受診をおすすめします。
まとめ|シニア猫の小さな変化を見逃さないために
甲状腺機能亢進症は、高齢の猫で比較的多く見られる病気ですが、早い段階で発見し、その子に合った治療を始めることで、症状の改善や進行を抑えることにつながります。日頃から体重や食欲、飲水量、活動性などの変化を確認し、シニア期には定期的な健康診断も活用しましょう。
かず動物病院では、甲状腺機能亢進症の診断から治療、経過観察まで、それぞれの猫の状態に合わせて丁寧にサポートしています。「最近よく食べるのに痩せてきた」「年齢のせいか判断に迷う」と感じたときは、まずはぜひ一度ご相談ください。
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