2026.01.09 【症例紹介】16歳6カ月トイプードルの重度歯周病治療|「ごはんが痛い」原因と回復までの経過
ごはんを食べようとすると、キャンと鳴いて痛がる…そんな様子が続くと、飼い主様としては「年齢のせいだろうか」「どこか悪い病気ではないか」と、不安に感じられるのではないでしょうか。
今回は、食事のたびに強い痛みを訴えていた高齢のトイプードルに対し、歯周病治療を行った症例について、診断から治療、そして回復までの経過をご紹介します。

■目次
1.症例情報(概要)
2.ご相談内容とご来院時の状態
3.検査結果と治療方針
4.治療と処置の流れ
5.術後の様子と経過
6.高齢犬の歯周病について
7.まとめ
症例情報(概要)
・種類:犬(トイプードル)
・年齢:16歳6カ月
・性別:避妊メス
・体重:3.3kg
・主訴:食事の際に痛がって鳴く、落ち着きがなく夜も眠れない
・病名:重度歯周病
・処置内容:歯石除去・抜歯・歯肉縫合術・舌縫合
・現在の経過:食欲・体重ともに回復し、良好に経過
ご相談内容とご来院時の状態
数日前から「フードを食べるとキャンと鳴いて口を痛がる」「そのせいか落ち着きがなく、夜も眠れていない」とのことで来院されました。
診察時は、顔まわりに触れようとするだけでも強く嫌がる様子があり、口腔内を十分に観察することが難しい状態でした。それだけ口の中に強い痛みがあることがうかがえました。
検査結果と治療方針
まずは全身状態を確認するため、血液検査・レントゲン検査・超音波検査を実施しましたが、いずれも大きな異常は認められませんでした。
口を大きく開けることはできなかったものの、観察できる範囲で重度の歯周病と歯石の強い付着が確認されました。これらの所見から、食事の際に強い痛みが出ている原因は、歯周病による口腔内の炎症や損傷であると判断しました。
治療方針については、年齢が高いことや麻酔に対する不安を踏まえ、飼い主様と十分に相談したうえで検討し、まずは身体への負担を抑えることを優先し、段階的に治療を進めていく方針としました。
<治療方針>
・注射による内科的治療を行い、痛みや炎症のコントロールを図る
・食事の様子や痛みの程度を確認しながら経過を観察
・症状の改善が一時的な場合や、痛みが強く生活に支障が出る場合は、麻酔下での歯周病治療(歯石除去・抜歯・縫合)を検討
治療と処置の流れ
痛みの程度や生活への影響を確認しながら、治療を進めていきました。
① 内科的治療からの開始
高齢であることから、当初は麻酔をかけての処置を飼い主様が希望されず、まずは内科的治療を選択しました。内服が難しいため、注射による治療を行いました。
注射後は半日ほど食事がとれるようになるものの、時間が経つと再び同じ症状を繰り返す状態が続きました。
② 麻酔下での処置へ方針変更
症状の改善が一時的であること、痛みが日常生活に大きく影響していることを踏まえ、再度飼い主様と相談のうえ、麻酔をかけての処置を行う方針となりました。
③ 歯周病治療(歯石除去・抜歯・縫合)
麻酔下で詳しく口腔内を確認したところ、重度の歯周病が原因で舌の裏が大きく裂け、口角部の歯肉にも穴が開いている状態でした。
まず歯石の除去と抜歯を行い、その後、傷ができていた歯肉や裂けていた舌を一つひとつ丁寧に縫合しました。
術後の様子と経過
舌の裂傷については、腫瘍などが原因ではないことを確認でき、歯周病が引き金となってさまざまな口腔内トラブルが起きていた症例と考えられました。
手術翌日から痛みは大きく改善し、自分でごはんを食べられるようになりました。高齢ではありましたが、麻酔後のトラブルもなく、減少していた体重も徐々に回復。現在も良好な状態を保っています。
高齢犬の歯周病について
歯周病は、年齢を重ねた犬で特に多く見られる病気です。進行すると、歯ぐきの痛みだけでなく、舌や口腔内の粘膜を傷つけてしまうこともあります。
また、歯周病は口の中だけの問題にとどまらず、細菌や炎症が全身に影響をおよぼすことがあると考えられています。心臓や腎臓などへの負担につながる可能性も指摘されており、年齢を重ねた犬ほど注意が必要です。
「年だから仕方ない」「食べにくそうだけど様子を見よう」と思われがちですが、実際には強い痛みが隠れているケースも少なくありません。適切な治療によって、食事がしっかりとれるようになったり、夜に落ち着いて眠れるようになったりと、日常生活の様子が大きく改善することもあります。
高齢になると麻酔に対する不安を感じる飼い主様も多いかと思いますが、処置を検討する際には、血液検査や画像検査などの術前検査を行い、全身状態を確認したうえで治療方針を決めていきます。年齢だけで判断せず、その子の体調に合わせて無理のない選択をしていくことが大切です。
まとめ
今回の症例では、重度の歯周病によって強い口の痛みが生じていましたが、段階的に治療を進め、必要なタイミングで麻酔下処置を行うことで、食事や生活の安定を取り戻すことができました。
高齢であっても、状態やご家族のご希望を踏まえながら治療の選択肢を検討することは可能です。「ごはんを食べると痛がる」「口を触られるのを嫌がる」といった変化に気づいた際には、早めに動物病院へ相談することをおすすめします。
かず動物病院では、その子の年齢や体調、ご家庭の状況に合わせて、無理のない治療方針を一緒に考えることを大切にしています。気になる変化があれば、どうぞお気軽にご相談ください。
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