2025.10.03 【症例紹介】8カ月ミックス猫の停留睾丸(停留精巣)摘出|去勢手術で早期に対応
猫の去勢手術は、望まない繁殖を防ぐだけでなく、発情期のストレスや将来的な病気のリスクを減らすためにも広く行われています。
今回ご紹介するのは、去勢手術を希望されてご来院いただいたところ、片方の精巣(睾丸)が陰嚢に降りず、お腹の中に残っていた猫の症例です。
■目次
1.症例情報(概要)
2.ご相談内容とご来院時の状態
3.検査結果と治療方針
4.処置の流れ
5.術後の経過
6.猫の停留睾丸について
7.まとめ
症例情報(概要)
・種類:猫(ミックス)
・年齢:8カ月
・性別:オス
・体重:3.7kg
・主訴:去勢手術希望、左の精巣が陰嚢に降りていない
・病名:左停留睾丸(腹腔内精巣)
・処置内容:去勢手術、左停留睾丸摘出術
・術後経過:抜糸まで問題なく回復し、その後も良好に経過
ご相談内容とご来院時の状態
去勢手術を希望されてご来院いただきました。
診察したところ、右の精巣は通常どおり陰嚢内にありましたが、左の精巣は陰嚢に降りておらず、お腹の中に残っている(腹腔内停留睾丸)の状態でした。
検査結果と治療方針
8か月齢という月齢を考えると、これ以上精巣が自然に降りてくる可能性はほとんどありません。そのため、通常の去勢手術に加えて、左の精巣については開腹による摘出が必要と判断しました。
<治療方針>
・右精巣は通常の去勢手術を実施
・左精巣は開腹により摘出
・術前に血液検査と超音波検査を行い、全身状態と精巣の位置を確認
処置の流れ
去勢手術とあわせて、腹腔内に残っていた精巣の摘出を行うため、以下の流れで処置を進めました。
①術前検査
全身麻酔の安全性を確認するために血液検査を行い、あわせて超音波検査で腹腔内の精巣の位置を確認しました。
②去勢手術(右精巣)
通常の方法で右の精巣を摘出しました。
③停留睾丸の摘出(左精巣)
事前に確認していた位置で開腹を行い、腹腔内に残っていた左の精巣を丁寧に摘出しました。
術後の経過
手術は大きな合併症もなくスムーズに終了しました。精巣の位置が事前に確認できていたため、手術時間も短く済みました。術後の回復も良好で、一週間後には抜糸を終え、現在は元気に過ごしています。
猫の停留睾丸について
停留睾丸(停留精巣)とは、子猫の成長に伴って本来であれば陰嚢に降りてくる精巣が、お腹の中(腹腔内)や足の付け根付近(鼠径部)にとどまってしまう状態を指します。
見た目だけでは分かりにくいこともあり、去勢手術を希望して受診した際に獣医師の診察で判明するケースが多くみられます。
停留睾丸は、正常な位置にある精巣と比べて将来的に腫瘍(精巣腫瘍)を発症するリスクが高いことが知られています。さらに、ねじれてしまい「精巣捻転」を起こすと、急激な腹痛や全身状態の悪化につながる危険もあります。
そのため停留睾丸が見つかった場合には、外科的に摘出しておくことが推奨されます。今回の症例のように若いうちに去勢手術を行うことで、発情期のストレス軽減や望まない繁殖の予防に加え、将来的な病気のリスクを未然に防ぐことにつながります。
まとめ
今回の症例では、去勢手術をきっかけに腹腔内に残っていた停留睾丸が見つかりましたが、手術で無事に摘出し、元気に回復することができました。
停留睾丸は見た目だけでは気づきにくいこともありますが、放置すると将来的な病気のリスクにつながります。去勢手術や健康診断を通じて早めに発見し、適切な処置を行うことが大切です。
かず動物病院では、日常診療や予防医療、外科手術に幅広く対応しています。体調や手術に関してご不安なことがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
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