2025.09.08 【症例紹介】15歳0カ月トイプードルの胆嚢摘出術|続く嘔吐・下痢の原因は胆嚢粘液嚢腫
犬の胆嚢に関連する病気のひとつに「胆嚢粘液嚢腫(たんのうねんえきのうしゅ)」があります。進行すると激しい嘔吐や下痢、腹痛などを引き起こし、場合によっては命に関わることもあるため注意が必要です。
今回は、繰り返す嘔吐と下痢の症状でご相談いただいたトイプードルの症例をご紹介いたします。
■目次
1.症例情報(概要)
2.ご相談内容とご来院時の状態
3.検査結果と治療方針
4.処置の流れ
5.術後の経過
6.胆嚢粘液嚢腫について
7.まとめ
症例情報(概要)
・種類:犬(トイプードル)
・年齢:15歳0か月
・性別:避妊メス
・体重:3.9kg
・主訴:頻回の嘔吐・下痢、横になれず落ち着いて寝られない
・病名:胆嚢粘液嚢腫
・処置内容:胆嚢摘出術
・術後経過:食欲や血液検査の数値も改善し、良好な経過を維持中
ご相談内容とご来院時の状態
「前日の夜から嘔吐と下痢を繰り返し、横になれず立ったまま落ち着きなく過ごしている」とのご相談がありました。
ご来院時には食欲もなく、元気も見られず、明らかに体調が悪い様子でした。
検査結果と治療方針
診察時には元気や食欲がなく、腹痛の様子も見られたため、以下の検査を行いました。
・血液検査
・レントゲン検査
・超音波検査
検査の結果、胆嚢にゼリー状の内容物が充満し、胆嚢が大きくふくらんでいることが確認され「胆嚢粘液嚢腫」と診断しました。胆嚢が破裂する危険が高く、全身状態の悪化も見られたため、速やかに胆嚢を取り除く手術を行うこととなりました。
<治療方針>
・胆嚢摘出による外科的治療
・麻酔リスクに十分配慮しながらの手術実施
・術後は入院管理を行い、状態の回復を確認したうえで退院・通院へ移行
処置の流れ
高齢で、さらに体調も優れない状態だったため、手術にあたっては特に麻酔のリスクを丁寧に評価し、安全性を確認したうえで処置を進めました。
①術前準備
15歳という年齢を考慮し、全身麻酔に耐えられるかどうかを確認するために慎重に検査・評価を行いました。その結果を踏まえ、リスクに十分配慮しながら手術を行うことを決定しました。
②胆嚢摘出手術
腹部を開いて胆嚢を確認したところ、胆嚢は大きくふくらみ、周囲の組織と一部が癒着していました。丁寧に癒着を剥離し、胆嚢を摘出。手術中は出血や合併症が起こらないよう、慎重に操作を行っています。
③術後管理
手術後は入院管理を行い、点滴や投薬によって全身状態を安定させました。
数日後には食欲も改善し、体調が安定したため退院。その後は通院による経過観察に切り替えました。
術後の経過
退院後は血液検査の数値も少しずつ改善し、現在は通常の生活を送れるようになっています。定期的に健康診断を行いながら、良好な経過を維持しています。
胆嚢粘液嚢腫について
胆嚢は肝臓の近くにある臓器で、胆汁という消化を助ける液体をためておく役割を担っています。この胆嚢にゼリー状の粘液がたまり、内部がふくらんでしまう病気を「胆嚢粘液嚢腫」といいます。
この病気は初めのうちは目立った症状が出ないことも多く、進行してから気づかれるケースも少なくありません。進行すると、今回の症例のように嘔吐や下痢、お腹の痛みといった症状が出て、最悪の場合は胆嚢が破裂して命に関わる危険もあります。
今回は検査で早めに見つけることができ、胆嚢を取り除く手術につなげられたことで、無事に回復へと向かうことができました。
胆嚢の病気は「年齢のせいかな」と見過ごされがちなサインから見つかることもあります。「食欲が落ちている」「元気がない」といった日常の小さな変化にも注意してあげることが大切です。あわせて、血液検査や超音波検査といった定期的な健康診断を受けることで、早期発見につながります。
まとめ
今回のトイプードルは、胆嚢粘液嚢腫により嘔吐や下痢に苦しんでいましたが、早期に検査を行い、胆嚢を取り除く手術を実施したことで無事に回復へとつながりました。
胆嚢粘液嚢腫をはじめとする胆嚢の病気は、症状がはっきりしないうちに進行することがあり、気づいたときには命に関わるリスクに直面している場合もあります。日常の小さな変化を見逃さず、少しでも不安を感じたときには動物病院にご相談いただくことが大切です。
かず動物病院では、犬や猫の健康診断や各種検査を通じて病気の早期発見・早期治療に努めています。愛犬・愛猫の体調で気になることがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
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