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2025.05.12 【症例紹介】9歳6カ月トイプードルの歯石除去|口臭・歯石の早めのケアで将来のトラブルを予防

「最近、お口のニオイが気になる」「奥歯に歯石がついてきたかも…」
そのように感じて「そろそろ歯石を取ってあげた方がいいのでは?」と悩まれる飼い主様も多いのではないでしょうか。

毎日歯磨きを頑張っていても、どうしても奥歯までは磨ききれず、少しずつ歯石がついてきてしまうこともあります。

今回ご紹介するのは、歯石の付着と口臭をきっかけにご相談いただいたトイプードルの男の子の症例です。

■目次
1.症例情報(概要)
2.ご相談内容とご来院時の状態
3.検査と治療方針
4.処置の流れ
5.術後の様子と経過
6.軽度歯石・軽度歯肉炎とは?
7.まとめ|歯石除去で将来のトラブルを予防しましょう

症例情報(概要)

犬種:トイプードル
年齢:9歳6カ月
性別:去勢オス
体重:8.0kg
主訴:口臭・歯石
病名:軽度歯石の沈着、軽度歯肉炎
処置内容:全身麻酔下でのスケーリング・抗菌剤塗布
術後経過:麻酔からの覚醒良好/当日退院

ご相談内容とご来院時の状態

来院されたきっかけは「口臭と奥歯の歯石が気になる」とのご相談でした。
ご自宅での歯磨きにも取り組んでいらっしゃいましたが、奥歯はどうしても磨き残しが出やすく、軽度の歯石が付着している状態でした。

検査と治療方針

診察では、奥歯に軽度の歯石の沈着があり、それに伴って歯肉にわずかな赤み(炎症)が確認されました。重度の歯周病は見られませんでしたが、将来的な進行を予防するため、早めの処置をご提案しました。

この子には心臓の基礎疾患があるため、麻酔のリスクにも十分配慮する必要がありました。ご家族とよく話し合った結果、「年齢が若いうちに処置しておきたい」とのご希望を受け、慎重に準備を進めていくことになりました。

処置の流れ

歯石除去は全身麻酔が必要な処置です。そのため、まずは全身麻酔下での手術を安全に行えるかを確認するための術前検査を行います。今回は心疾患の既往もあるため、特に慎重な判断が求められました。

術前検査

血液検査:全身状態、内臓機能の評価
レントゲン検査:心臓のサイズや肺の状態の確認
超音波検査:心臓の動きや弁の異常の有無を確認

これらの検査により、麻酔に耐えうる状態であることを確認したうえで、当日の処置に臨みました。

処置内容

①スケーリング(歯石除去)
超音波スケーラーを用いて、歯の表面に付着した歯石を一つひとつ丁寧に除去します。

②ポリッシング(研磨)
歯の表面を研磨し、歯石の再付着を防止します。今回は2種類の研磨剤を使い分け、表面をなめらかに整えました。

③抗菌剤の塗布
処置後の感染を予防するために、抗生剤の軟膏を歯周ポケットへ注入し、炎症の鎮静化を図りました。

処置自体は歯石の量も少なかったため短時間で終了し、麻酔による体の負担も最小限に抑えることができました。

術後の様子と経過

処置後の麻酔の覚醒もスムーズで、当日中に無事に帰宅されました。
ご自宅に戻ってからも、食欲や元気さに変わりはなく、いつも通り過ごされているとのことです。今後は、ご家庭での歯磨きを継続していただきつつ、歯科検診を定期的に受けていただく予定です。

軽度歯石・軽度歯肉炎とは?

ここで今回の症例で見られた「軽度歯石」や「軽度歯肉炎」について、簡単にご説明します。

軽度の歯石や歯肉炎は、症状としては目立たないこともありますが、放置すると徐々に歯周病へと進行するリスクがあります。歯石の表面には多くの細菌が存在しており、時間とともに歯肉に炎症を起こし、歯がぐらついたり抜けたりすることもあります。

また、歯周病が進行すると、痛みや食欲不振を引き起こすだけでなく、細菌が血流に乗って全身に影響を及ぼすケースもあるため、早めの対処が大切です。

まとめ|歯石除去で将来のトラブルを予防しましょう

歯石除去は「見た目をきれいにする」ためだけの処置ではありません。今回のように症状が軽いうちに処置を受けておくことで、愛犬への負担を軽減できるだけでなく、将来的に歯を残せる可能性も高くなります。

歯周病は、実は3歳以上の犬の多くに見られるとも言われています。「うちの子はまだ大丈夫」と思っていても、実はケアが必要なケースも少なくありません。気になる症状がある場合はもちろん「うちの子も診てもらった方がいいのかな?」と感じたら、どうぞお気軽に当院までご相談ください。

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